なんとなく準備しておかなくてはいけないなぁと思いながらも、ついつい先延ばしにしていると突然入用になって困ることがある礼服。かといって普段そんなに着用することもないし・・。今回は、日本人の冠婚葬祭の必需品として大切な礼服について実際に起こった体験談を交えながらお話ししていきたいと思います。
まず身近な経験談としてお話をさせていただきますと、私自身は恥ずかしながら2年前に籍を入れたものの、夫婦共に長男長女でありながら下の兄弟がお互いに多く家庭に生活費の面で援助しなければならず、また片親同士であったこともあり費用的な面で難しいということで結婚式を挙げることはひとまず諦めようということになり、挙式は先延ばしすることとなりました。
そんな中で籍を入れて2年目になろうかという時に、主人の妹が結婚することとなりました。それは突然の出来事でした。
といいますのも、義妹は主人との年齢差もあり、まだ年齢的にもとても若く就職して間もない頃でしたので無意識のうちに「まだ結婚はしないだろう」という認識でいたのです。
学生時代から付き合っていた彼との授かり婚であるということでした。義妹自身も急なことであった為、妊娠中の体調も良くない中どんどん話を進めていったようです。そしてなんといっても、義妹の結婚相手の家柄が町で有名な名家のご子息ということで、これも予想外に大きな話となり急な決定であった結婚とはいえ、相手方に費用は全面負担していただくことで盛大な結婚式が執り行われることとなりました。
そこで大慌てとなったのが主人の母でした。盛大な結婚式の費用を全額負担していただくのであれば、それ以上のことは迷惑がかけられない。けれどもあまりに急なことで準備がなにもできていないと。
そして、その相談は義妹ではなく全て私にくることとなりました。妊娠中である義妹に負担をかけたくないという気持ちから私に頼ったのだと思います。それまで楽観的に捉えていた私も少しずつこれはなにやら面倒なことになりそうだという予感がしてきていました。
身内の祝儀の額から、両家顔合わせの際の手土産はなにがいいか、家族は誰を連れていくべきか、果てはあいさつへ行く際のレンタカー手配等までかなり細かい面でまでフォローに入ることとなりました。(そのあたりの細かい話はまた後日とさせていただきます)そしてそんな準備が進んでいく中で一番の問題となったのが、この礼服問題です。まず、義母の礼服としてはやはり格式高い黒留袖ということで間違いないのでそこは当然すぐに決まりました。
ただ、ここで既に問題が発生。黒留袖は一応持っているとのことでしたが、義母の嫁入り時(およそ30数年前)に義母の父が持たせてくれたというもので、ただその後この時まで一度も着たことがなく色褪せや劣化が心配であること、そして他の小物類がまばらにしかないのでどうしたらいいかということでした。私は色々と考えましたが、まずはじめに、お父様の用意してくださったおもいれのある着物なのだからそれは生かして他は購入してはどうかと提案をしました。
しかし、義母と色々と調べてみたところ小物類を別で買うと多額の費用がかかるということがわかりました。義母の場合、黒留袖に合う帯も持っていなかった為、尚更費用が膨大になってしまいます。この機会に結婚式で着用する際の黒留袖について色々と調べたのですが、帯はもちろん小物に至るまで形式や色に渡り様々な細かい決まりがあり、それに沿ったものを選ばなければマナーをわきまえていないととられ、失礼に当たるとのことでした。
比較的形式的なことに無頓着で楽観的な義母ですので、こういったマナーはなんとなくでしか知らなかったようです。相手方もこういった方々なら気楽でいいのかもしれませんが、お堅い家柄ということを伺い、私もかなり慎重になりました。それに、例えそうは見えなかったとしても、やはり相手方にどう思われるのかが少しでも心配であればマナーは守ってキッチリと式してもらうことが新婦の親類としての務めだとも思います。(当然逆の場合も然りです。)
そこで、今度は私の実母に相談をしました。私の母も本来はあまり形式にとらわれないほうなのですが、職場が偶然にも呉服や貴金属を扱うお店であり、冠婚葬祭マナーには上の方から日々口すっぱくご指導を受けているとのことでしたので。色々とアドバイスを受けましたし、そちらの商品も買って欲しいと営業もされましたが、やはり費用面で高額になってしまうということで断念しました。
そんな中でひらめいたのがレンタルです。初めは小物のレンタルを色々と探していました。リーズナブルで品揃えも豊富です。
これはと思い、早速義母を招いて一緒にレンタルの品ぞろえを物色しました。小物ばかりを検索していたのですが、見ていくうちに黒留袖と帯、小物一式のセットのほうがお得なのではということに気がつきました。父には申し訳ないが、家にある着物より柄も鮮やかで華やかなものがたくさんあると目を輝かせていました。一通り目を通し、義母が気に入った柄が見つかった為いざ注文しようとなったとき、色々と不安が出てきました。
実物を見たわけではないので実際の品質はどうなのか、サイズはちゃんと合うのだろうか、小物類や着物の細かい格式は間違っていないか。(同じ黒留袖と一口に言っても、母、兄弟等立場によって少しずつ格式が違う場合がある為)ということで、そちらに記されていた電話番号に直接問い合わせることにしました。すると、問い合わせたお店の担当の方は大変丁寧に対応してくださり、新婦の母という立場ということを把握したうえで小物類や帯もセレクトさせていただきますのでご安心くださいということと、心配していたサイズ感も、必要な部分の採寸をして伝えることで、ぴったりなものを選んで頂けるということでこちらの不安をすべて取り除いてくださいました。
ちなみになんですが、なんとその問い合わせをしたのが式の1週間前の出来事だったのです。本来であればこれだけ大きな行事ですから1日でも早い事前準備が必要だと思いますし真似はしないでいただきたいものですが、万が一急なことがあってもレンタルであれば比較的迅速な対応をしていただける確率が高いといえます。
3日前に実物が届きましたが、レンタルとは思えない程質も良く、生地の傷み等も全く気になりませんでした。こちらについてもレンタル先によっては取り換え可能な場合もあります。ということで無事に結婚式を終えることができ、義母にも式の途中、食事時にお褒めの言葉と感謝の気持ちをいただき、この1件で私と義母との関係性もより深いものになったと思っています。
ちなみに、私の服装はといいますと結果としてレンタルすることとなりました。無知だった私はパーティドレスで行こうと思っていたのですが、いろいろ調べていくうちにこれはまずいと気がついたからです。新婦の義姉である私の礼服はやはり留袖です。黒留袖も検討しましたが、他の親族の方々の年齢層など考慮し、今回は色留袖が適当と判断し、持ち合わせがなかったためレンタルさせていただきました。
結果としてはこれが大正解でした。相手方の新郎のお姉様と新婦の妹は独身で若い為振袖を着用しており、私の年代は他にいなかったので、色留袖がやはり適当だったと感じました。今回の体験を通して、礼服のマナーや格式、TPOに合わせた服装がいかに大事であるかを感じたのと同時に、とはいえなかなか普段は遠い存在と感じてしまう礼服を、レンタルという形でとりいれることがいかに効率的で賢い選択かということに気がつきました。
私たち夫婦の兄弟は独身もまだ数人います。やはり毎回同じものを着るよりも、手軽におしゃれに、上手にレンタルをこれからも利用させていただくつもりです。